質的研究の理解を深める方法とは

質的研究の理解を深めるためには、木下(2009)によると「質的研究法による多くの作品に触れること、印象に残る作品に出会うこと、古典とされる作品に挑戦すること、とよくアドヴァイスされていた」とあります。一方で、質的研究の論文は、「質的研究法をどのように活用したのかまでは通常詳しくは述べられない。作品は方法を説明するものでないから、そこは目的が違う」ものです。そこで、質的研究への理解を深めることを目的として、『質的研究と記述の厚み M-GTA・事例・エスノグラフィー』で、「質的研究法とそれを用いた作品の両方を提示し、方法と作品との関係を往復的に検討しようとする試み」を行っています。

このように、実際は、質的研究法を理解しようとすると、文献に頼るのが一般的ですが、ちょっとしたところで躓いてしまったり、なかなか理解が深まらないものです。現在、M-GTA社会実装研究会(SIM)では、「比較質的研究法論4回連続シリーズ」として、「同じデータを使って、異なる研究方法で分析をするとどうなるのか」を、慶應義塾大学文学部准教授 樫尾直樹先生が、分かりやすくご紹介下さっています。7/18(日)は、「比較質的研究法論―自分に合った研究法とは?―【PART2】 <GTA, テキストマイニング, エスノグラフィー編>」、いよいよグラウンデッド・セオリー・アプローチの登場です。文献だけではわかりにくい、それぞれの分析方法の特徴や、分析の実際を理解できる、大変貴重なセミナーです。詳細およびお申し込みはこちらからお願いします。

個人的な話で恐縮ですが、8月に開催される日本教育心理学会、日本カウンセリング学会の大会(総会)での発表に向け、現在、M-GTAとテキストマイニングで分析をやり直しています。樫尾先生の講座をお聞きしてから、臨みたかったのですが、資料の提出が明日までなので、泣く泣く一人で取り組んでいます(涙)。テキストマイニングにも挑戦しているのは、5/30および6/13のSIM研修会での樫尾先生のお言葉が背景にあります。参加された方はすぐにピンときたのではないでしょうか。詳細は割愛しますが、定性的なデータをテキスト分析による定量的な分析を担保することによって、信頼性が得られるからです。テキストマイニングに挑戦する過程では、データの下準備で形態素解析の時点で、まずつまづきました。お恥ずかしいことに、茶筅?MeCabって何?のレベルです。また、実際KH Coderで分析しようとするとエラーが出てしまって、分析まで進めなくなってしまったり、そこをなんとか乗り越えて、結果を出すところまでいっても、その結果を今度はどう扱うかといった部分で立ち止まってしまったりと、悶々とした日々を過ごしています。これが院に居た頃でしたら、ゼミ仲間との意見交換から何かヒントが得られる可能性もあるのに、、とガックリ落ち込んだところで、SIMの存在を思い出しました!そうです、私には仲間が居たんです!会長に相談してみることで、きっと何か打開策が見いだせるハズ!と勇気が出てまいりました。私のように、院を修了された方にとっては、「研究についてディスカッション出来る仲間」というのは、なかなか得難いと思います。ぜひ、SIM勉強会を通して、お仲間を見つけてください。

8/7開催のSIM勉強会では、そうした「研究についてディスカッション出来る仲間」が見つけられるように、同じ関心のある方たちと意見交換できる時間を設ける予定です。勉強会詳細およびお申し込みはこちらからお願いします。(文:山本)

お写真は、Harryさんからお借りしています。いつも素敵なお写真をありがとうございます!

引用文献

木下康仁(2009)『質的研究と記述の厚み M-GTA・事例・エスノグラフィー』弘文堂、pp.10-23