質的研究におけるインタビューについて

質的研究におけるインタビューを,どうやっていいか分からない,という相談を受けました。量的研究のサーベイとは異なり,質的研究においては,インタビュイーの行為そのものではなく,体験した世界を「経験の語り方,言語化のしかた,意味づけ方」に焦点があてられることから,その語りを聴く技法が重要になってきます(やまだ,2007)。

そうしたことを前提に,インタビュー時に意識することとして,キャリアカウンセリング技法の観点から,3つご紹介します。①問いかけた際の,インタビュイーの沈黙を大切に扱うことです。クライエントの沈黙には,言葉にならない気持ちや感情を味わっていることや,自分の考え,抱える問題などを整理したり,まとめているなど,意味があるからです(宮城,2012)。インタビューの場面でも,インタビュイーが沈黙してしまうと,なんとか沈黙を打破しようとあれこれ言ってしまいがちですが,その沈黙の時間も大切にし,じっくり待ってみましょう。②インタビュイーの発言の明確化です。インタビュイーの発言を「こういうことですか」と要約して伝え返すことは,「いえ,私が言いたかったのは~ということです」「そうそう,そうなんです。だから~という行動をしたんです」などのように,インタビュイーが自身の言いたいことや本音への気付きに繋がります。③クリティカルシンキングの実践です。インタビュイーの発言を鵜呑みにせず,一歩踏み込んでみてください。「どういうことですか?」「なぜ,そう考えるようになったのですか?」「〇〇さんにとっては,どういう意味を持ちますか?」と深堀りすることで,インタビュイーが自身の発言の根底にある価値観や想いに気付くだけでなく,研究者のパーシスティブへの答えを内包した豊かな語りが得られる可能性があります。

5月30日の第1回SIM研修会では,「質的研究法におけるインタビューの実際」をテーマに,慶應義塾大学の樫尾先生にご登壇いただきます。他者に貴重な内的経験を語ってもらうために留意する点や,実際の進め方について,長年,フィールドワークにおいて数多くのインタビュー調査を行った経験を持つ樫尾先生のお話を,ぜひ,皆さまの研究に役立てていただければと思います。(文:山本)

photo: Harry

参考文献

やまだようこ(2007)「質的研究における対話的モデル構成法-多重の現実,ナラティヴ・テクスト,対話的省察察性」質的心理学研究,第6号,p.184

宮城まり子(2012)『キャリアカウンセリング』[第19版]駿河台出版社